2016年3月8日火曜日

はじめに

「震災犠牲者の行動記録」を含む「命の軌跡 ~東日本大震災5年 一連の報道~」(岩手日報社)が、2016年度日本新聞協会賞(編集部門)を受賞しました。

首都大学東京 渡邉英徳研究室(2018年度より東京大学大学院 渡邉英徳研究室)と岩手日報社は共同で、東日本大震災から5年を迎える2016年3月、岩手県における震災犠牲者の「地震発生時」から「津波襲来時」までの避難行動をまとめたデジタルアーカイブ「忘れない~震災犠牲者の行動記録」を制作しました。



2011年3月11日午後2時46分、そして津波襲来時にどこにいたのか、犠牲者の所在を遺族に取材し、データを集めました。

本コンテンツでは、居場所が詳細に判明した犠牲者1326人について、被災地の震災直後の立体的な航空写真・地図と組み合わせ、避難行動を可視化しています。さらに、ご遺族の了解を得た犠牲者687人については、氏名と当時の行動も閲覧できます。なお、被災直後及び1974-1978年の空中写真レイヤには、国土地理院のタイルデータを利用しています。

岩手日報社は、震災犠牲者一人一人を紙面で紹介するプロジェクト「忘れない」や、災害から命を守るための連載「てんでんこ未来へ」を展開しています。今回は、その集大成として、犠牲者の避難行動を詳細に分析・可視化しました。このことにより、犠牲者の声なき声を可視化し、一人でも貴い命を失わないよう、震災の教訓として後世に残していくことを企図しています。

制作にあたって、渡邉英徳研究室が「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」「東日本大震災アーカイブ」「沖縄戦デジタルアーカイブ」などで培ってきた「多元的デジタルアーカイブズ」の技術を応用しました。オープンソース・ソフトウェアを活用し、PCとスマートフォン・タブレット端末からも閲覧することができます。

さらに紙面ではアーカイブを活用して避難行動について分析し、「避難所を過信せず、少しでも高い場所へ」などの提言を行い、デジタル技術との融合で紙メディアの可能性を広げていきます。

MapData: © OpenStreetMap contributors